トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐


「待って科乃くん。科乃くんはあたしの隣に来ていいのよ!」




上坂さんが慌てて引き止める。



「いや、俺は凜の彼氏だからね。凜の居ない所に用は無いよ」



「絵里子がそんなに言うなら俺が隣に座ってやるよ」




「凌太は黙ってて。あたしは科乃くんに言ってるんだから!」



「ちょっ、冗談きついよ絵里子。お前の彼氏は俺だろ?」




「……その前に、アンタはあたしの彼氏よね」




瞬間、村尾凌太は椅子から落ちた。




「孝啓も、何やってんの?」





2人目の女子の登場に、森田孝啓の顔から血の気の引いた音がした。




えっ、誰、知り合い?

それに、彼氏って………。




尻餅をつく村尾君を見下ろす女子。

森田君の後ろに立つ女子。

彼らを呆然と見る、上坂さんと大崎さん。




よくわからないけど、三角関係ってやつかな、コレ。



わたしはジリジリと後退した。





そして、隣には野次馬に溶け込み、行く末を見届ける壬生君。



彼はわたしと目が合うと、親指を立てた。




「ナイス戦線離脱」



「壬生君ほどじゃないよ」



壬生君の瞬間移動っぷりは凡人には真似できないもん。




「んな簡単に習得されてたまるかよ。でもま、今のは上手かったんじゃねぇの?」



「ありがとう……?」




遠回しに褒められた気がしたから、一応礼を言っておく。




「ほんっと、平凡顔って、周囲に溶け込むの得意だよな」




………バカにされただけだった。