トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐


「名前を知ってたのは、彼女達が呼んだのを聞いてたからだし、彼氏のフリしたのは………凜が可愛かったから」



「か、からかわないでください……!」




甘い声で囁かれ、顔が熱くなった。

良い声はそれだけで凶器だ。



「科乃くん、トロくさい女なんてほっといて、早く行きましょうよ」




会ったばかりのはずなのに名前呼びをする上坂さんが走ってくる。

他3人はモールの入り口で待っていた。




「女王様が待ちきれず、迎えに来たようだね。行こう」



「わっ………!」



壬生君に手を引かれ、上坂さんの横を華麗にすり抜けた。



「遅れてごめんね」



「いいけどさ、見せつけてくれちゃってこのやろ」


「6人で来てんだから、あまり遠くに行きすぎるなよ」



「気をつけるよ」




壬生君は爽やかに謝罪し、男2人がそれに絡む。



さすが、男子は仲良くなるのが早い。

わたしも壬生君みたいに、女子と仲良く………。



ちらっと大崎さんと目が合う。



「あ、あのっ……」



声をかけようとしても、ふいとそらされる。


………ですよね。




「科乃くーん、置いてかないでー」



「みんな、行こうか」




戻って来た上坂さんが壬生君にタックルを仕掛けるも、彼は半身ずらすことで自然に躱し、皆を促す。


その際、わたしと恋人よろしく手を繋ぐことも忘れない。


そしてわたしは、引かれるままにモールに足を踏み入れた。