トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐

爽やかな顔で、2組のカップルを促す彼。



状況を理解出来ないでいる彼女達とわたしを置き去りに、事情を知らないらしい彼氏2人は自己紹介を始める。




「こちらこそよろしく、絵里子の彼氏の村尾凌太だ」



「麻衣の彼氏の森田孝啓。よろしくな」




彼らの姿を認めた壬生君は一瞬驚いた様子だったけど、すぐにふわりと笑む。




「早速だけど、今日の予定は決まってるのかな?」



「とりあえず、そこのショッピングモールに行こうと思ってる」



「了解。じゃあ、移動しよう」



「絵里子、行くぞ」


「麻衣も」



村尾君と森田君がそれぞれの彼女をエスコートし、ショッピングモールに向かう。


2組の後を、壬生君にエスコートされたわたしがついて行く。


前の4人とそれなりの距離ができた今しかない。



「あのっ」


「なぁに?」


勇気を出した声に、壬生君は応えてくれた。



「えっと、どこかで会ったことって、ありましたか?」




「ふっ、何それ。ナンパ?」



「ちっ、違いますよ! わたしの名前を知ってたみたいだし、彼氏のフリして助けてくれるから、それで………」



「あー、わかったわかった。……ま、いきなりこんなことされれば迷惑だよな」



「いえっ、迷惑だなんてそんな……。本当に助かったんです、でも、壬生君はこんなことしてよかったんですか?」



「壬生君?」



「あっ、すみません、気安く呼んだりして………」




「……………いや、好きなように呼んでくれて構わないよ。今はキミの彼氏なんだから」



壬生君と呼んだ瞬間、きょとんとした顔をされたけど、すぐに元の笑顔に戻る。


苗字で呼んだのが不快だったのかと思ったけど、そうじゃないみたいでホッとした。

会ったばかりで名前呼びなんて、難しいから。