トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐



見ると、上坂さんが指したのは、小太りメガネにチェックシャツの、いかにもヲタクと呼ばれる人の集団。



嫌だ、行きたくないよ………。



「モタモタしてんじゃないわよ! 早く行きなさいよ、あんたのせいでトリプルデートできないじゃない!」



「ほら早く。みんな児嶋さんを待ってるんだから」



ドンッと背中を押され、つんのめる。



こける……!




咄嗟に目をつぶると、誰かにぶつかった。




「おっと」


「あ、すみません………」



慌ててその人から離れようとしたけれど、逆に強い力で抱きしめられて出来なかった。




「グズな連れがごめんなさぁい、ケガしてませんか?」



「いや、平気だよ」




わたしは腕の中で彼を見上げる。



上坂さんが猫被るのも納得の、優男なイケメンだった。




「このグズにはあとできちんと言って聞かせるから、許してね?」



「………その必要はないかな」



「なんでよ?」



「だって、こういうどんくさいとこもカワイイから」



甘く優しい声で上坂さんに言い返した優男なイケメンに、わたしも上坂さんたちもぽかんとする。




「おや、失礼。名乗るのを忘れていたね。児嶋凜の彼氏で壬生科乃(みぶしなの)。皆、今日はよろしくね」




「えーっ!!!」

「うそっ!!!」




優男なイケメン改め、壬生科乃は、ひだまりのような微笑を浮かべながら、わたしの顔を強く鳩尾に押さえつけた。



お陰で悲鳴をあげることはなかったけど、彼の考えがわからない。



もちろん、彼とは初対面のはずだし、彼氏なんてもってのほか。



「じゃあ、行こうか。トリプルデートってやつをしに」