トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐

………………彼氏かー。



ごめんなさい、児嶋さん。


トイレの神様は無力です。



安田野枝としても、被害者同士何か助けになれたらよいのですが、面目無い。



児嶋さんのことが好きな男子を知りません。

今度の日曜日までに紹介できる彼氏などいないのです。




外からは雨の音がする。



馬鹿の考え休むに似たり。

……今日はもう帰ろう。






カバンを持ってトイレを出る。


うつむきながら昇降口に着くと。



「よお、お勤めご苦労さん」



イラっとする声がした。




「………貴様、帰ったんじゃなかったかしら?」



「待っててやったんだよ、俺様の傘を持つ名誉を与えてやる」



そう言って、浪瀬はビニール傘を押し付けてくる。




「この雨で傘無しで帰ったりはしないよな」


勝ち誇ったような顔に苛立ちばかりがつのる。



「結構です。自分の傘さして帰りますんで」



カバンから大きめのポーチを出すと、それをひったくられた。




「おい、何をするか!」



そしてあろうことか、奴は私の折りたたみ傘を広げたのだ。




「なんで濡れてんだ? 今朝は晴れてたよな。……だから相合傘のチャンスと思ったのによ」




「…………局地的な豪雨に見舞われまして………………」




本を糾せば、全て貴様のせいで!



私は朝から絡まれて、貴重な休み時間を無駄にして、出さなくていい被害者を生み出してしまったのですよ。



責任取れってんですよ。


セキニンを……………………あ。



折りたたみ傘をたたむ浪瀬に、これ以上ないほどの笑みを向ける。



「なんだお前、さっきまで睨んでたくせにキモイ」




なんとでも言うがいい。


今の私の行動はそれくらいでは止まらない。




「浪瀬クン、あなた、デート、したいんですよね」



今朝、わざわざ言いに来るくらいにデートがしたいなら。

セッティングしてあげましょう!



貴様に拒否権は無くてよ!