トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐

「忍っ……何でもないの、あたしたち、ガールズトークしてただけなの!」




こいつ、今更猫被りやがりました。


ガールズトーク?
んな可愛らしいものじゃなかったですよ。




「それより浪瀬、あの噂本当なのか?」



「噂?」



男子が浪瀬に問いかけるが、浪瀬に心当たりは無いようだ。


かく言う私も無い。




「ほら、浪瀬と安田が付き合ってるってゆー噂だよ!」



「マジかよ、浪瀬の本命って安田だったのか!?」



「お前ら見てないのかよ、初日に浪瀬の彼女名乗った可愛い子いたろ」



「だったら何で安田連れて行くんだよ」



「サイフに決まってんだろ、数多の美人をフってきた浪瀬がこんなブスを彼女にするわけ無いのが定石」



周りがあれこれ推測するのを、浪瀬は肯定も否定もしない。




………良かった。

あの時の恥が無駄にならずにいるようで。

でも、さっきから、ブスとかサイフとか、ビミョーに傷付くんですけど。



「おーい、席つけー」



今度こそ教師の登場で、皆がたがたと席につきだす。



「まずはあの女から身の程を弁えてもらわなきゃ」



「命拾いしたわね」




彼女らは去り際、吐き捨てるように言い。




「お返しは1回のデートな」



わざわざ立ち寄った浪瀬に耳打ちされた。



ええ、ええ。

確かに、タイミングよく入ってきた奴には計らずも助けられたのかもしれませんが。

誰がお返しなんかするものですか!

拒否する私を無理矢理連れ出したのですから、これくらいのアフターケアは当然なんじゃないですか?

むしろこっちがお返しを要求してやりたいくらいですよ。

てか、デートって、嫌がらせ以外の何物でもないわ!