「バカだろ。あんだけ言って、ちっとも伝わってねぇんだから」
コイツ2回も言いやがった!
深く長い溜息をついてから、彼は真剣な面持ちになる。
真正面からそれを受けた私はドキリとした。
「言ったよな、明日は覚悟しとけって」
…………覚えがある。
そのセリフ、いつ言われたか……。
気迫で負けないよう、睨み返しながら記憶を探る。
浪瀬は悪い顔をした。
「とぼけんじゃねぇよ、カ・ミ・サ・マ」
「……………」
あー。
あれか、思い出した。
昨日の浪瀬の捨て台詞だ。
放課後、校舎裏近くの女子トイレ。
トイレの神様やってる時、来訪された子羊さん。
「お前の言った通り、常に一緒に居た。誠意も見せた。……十分だと思わねぇか?」
ニヤリと笑む彼は、どう見ても子羊ではない。
ヒツジの皮を被ったオオカミーなんて…………。
うまくもなんともないわぁ。
はぁ…………。
とりあえず、まあ。
「キレーな空ダナー」
話しを逸らしてみることにした。


