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「とりあえず、何か食うか」



と、浪瀬に連れられたどり着いたのは、グラウンドの一画。

食べ物を売る屋台群。



一応、教室で喫茶店的なものはあるが、手軽で種類も豊富となると、こちらになる。


昼時なのも相まって賑わっているが、昨日ほどの視線は受けない。

人の流れに乗っているのもあるが、ここにいる人々の意識はほぼ全て何を食べようかに向いているので、人を気にするのは二の次なのだ。


これのせいか知らないけど、浪瀬は機嫌よく歩いている。

私も視線に晒されることがないので気が楽です。


念のため、目の前の広い背中に姿を隠すようにして歩いてますが。




………バレたらタダじゃ済まんでしょうね。


はぁ。


少し視線を落とせば、がっちり繋がれた浪瀬と私の手。

いつの間にか私の指と指の間に彼の指が入り込み、抜け出せなくなっていた。

手汗べったりで気持ち悪い筈なのに、離してくれない、離れない。

何故かを考えるのはもうやめた。


逃れられないことは道中に悟っている。


今はただ、放課後体育館裏コースにならないことを祈るのみ。



「おっ、これいいな」



お気に召したものがあったらしい浪瀬が足を止め、おひとつお買い上げ。

お金を出して商品を受け取るまで、片手でするものだから、私は逃げられなかった。


ちっと内心で舌打ち。



「ほらよ」



さっき買ったばかりのそれを押し付けられ、反射で受け取る。


見ると、割り箸の上に乗った白い雲。

わたあめとか、意外とかわいいものを!

イケメンには何でも似合うって自慢か!




「行くぞ」



言うが早いか、手を引かれ、次の屋台、また次の屋台へとはしごする。

途中、貰った袋に入りきらなくなったところで人目につかないところに移動した。