てか、浪瀬忍よ。
本命はどうしたよ。
そっち行きなよ。


貴様がポイポイ手を出すから、ボールを受け取って貰えず睨まれたクラスメートが隅っこで震えているではないか。


理不尽だわ。
解散しなさいよ女子どもめ。



そんな願い虚しく、最終的には入りきれないくらいの女生徒が集まった教室。


ここだけ人口密度が高い。

暑い。


隅っこ窓際に拠点を置く射的は、中心よりはマシであるが。


中心の浪瀬はこんな暑さだというに、汗ひとつ流さない。

アイドルか。



まあいいわ。


壁にかかった時計をちらと見る。


交代の時間だし、とっとと抜けちゃいましょう。



今日の交代者が時間通りに姿を見せたのをいいことに、そそくさとこの場を去ろうとすると。

ガシッと手首を掴まれ、足を動かしても前へ進めなくなった。



「んじゃあ、野枝はもらってくな」



爽やかな声とは裏腹に、抗えないほどの力で私は引き摺られた。


顔なんて確認しなくともわかるさ。
このパターン。


でも、一縷の望みにかけて振り向くが、やはり。



また貴様か!!

同胞達は!?


はっとして教室を見渡すと、窓際族は皆、親指を立てて見送ってくれた。

キラリと光る歯が眩しいぜ。


だが要は、私は彼らに見捨てられたということ。


窓際族は我が身が可愛い。


知ってたよ、私でも彼らの立場なら同じこしますもの……。



主に悪意の視線を浴びながら。

私は涙を飲んで、ドナドナされるしかなかった。