私もさっさと帰ろうと、立ち上がろうとした時。



「安田は残れよ」



逃がさないとばかりにドスのきいた声ですごまれ、浮いた腰が落ちた。


安田野枝、死刑宣告を受けた15の夏。






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担任のパシリとして集めた課題を職員室に運ぶ。


なんで私がこんなことを……。


わかっていても言わずにはいられまい。


担任はあれで、とても外面がいいのだ。

そして可愛い女の子が大好き。


彼のケータイの待ち受けは某美少女アイドルグループだ。

誰もいないところで、それを眺めてはニヤニヤしているのを知っている。



なまじ学校内での権力もあるものだから、彼が担任を受け持つクラスは校内一顔面偏差値が高い。

ここでは一般的には美少女も、平凡に成り下がる。


一般的な顔は不細工か、それ以下にまで落ちる。


生きにくい社会になったものだわ。



と、悲観するのは置いといて。




何が言いたかったのかというと。