この状態を甘んじて受け入れていると、空が一際強く光った。
「あ……」
少しして太鼓を叩いたような腹に来る音。
「もうそろ終わるかな」
続けざまに開く花火を見上げていると、いつの間にか空は月と星だけが瞬いていた。
「いつまでぼんやりしてんだよ。この歳になれば、花火なんてめずらしくねーだろ」
浪瀬に声をかけられた今、はじめて花火が終わっていたことに気付いた。
極度の緊張でどんな花火があがったかも覚えてない。
「サカってた奴らも帰ったし」
「あ、ほんとだ」
覗き見たら、月光に照らされる木だけがある。
「帰るぞ。野宿なんてごめんだ」
「あ……」
離れたぬくもりを追うように手を伸ばすが、触れる前に引っ込めた。
今私、何をしようと……。
とりあえず、先を行く浪瀬の背を追った。
あれ?
来た道と違う。
木々を抜けると、そこには小さな神社があった。
その正面を目で追うと、鳥居と浪瀬。
鳥居の奥に浪瀬は足から膝へと姿を消し、頭が地面の下に潜ったところでようやく理解した。
私は鳥居のほうに小走りし、その先の階段を下りて浪瀬の横に並ぶ。
「貴様! 私をだましたな!」