トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐



なんてことを浪瀬とカップルのふりして話していると。



「君たち何やってんの。ちょっと来なさい」



警備員の格好をした人数人に彼女たちは連れて行かれた。


余興も終わり、野次馬がそれぞれの祭りを楽しむために人ごみに溶け込んでいった。


私と浪瀬はジュースが置き去りにされたベンチに並んで腰掛ける。



「友人を見捨てるのかい、薄情者」



「けしかけた奴に言われたくねーな」



「まーまー。次会うことがあったら謝っといてよ」



「あいつらが連行されていくのを見てザマァっつってたっつっとく」



「やめろ」



座ったお陰で体力も少し戻ったし。



「じゃーそろそろ場所取りでもしようかね」



「花火までまだ2時間近くあるぞ」



「いい花火はいい場所から。早めのスタンバイが肝心よ」



「お前はタイムセールに行く主婦か! ……っち」



舌打ちした浪瀬は立ち上がり、すたすたと屋台とは逆方向に歩く。


おや、帰るのかな。


背中を見送っていると、ぐるんと振り返り、一気に不機嫌そうな顔になる。



「行かねーのか」



「…どこに」



「花火だろ。人の少ない穴場があるんだ。ついて来い」



再び背を向ける浪瀬を追いかけた。



 * * *