トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐



「おい、どうしたんだよ」



「何があったんだ?」



遅れてやってきた凌太と浪瀬。


凌太の腕には、6本の缶ジュースがある。


手伝ってやれよ浪瀬。



私はさりげなく凌太の手助けをして、ジュースをベンチの上に置く。



そうしている間にも、後ろはごちゃごちゃしていて。



「だから、みんなこの女に騙されてるの! 信じて!」



「落ち着きなよ」



「何よ! 孝啓はこの女の味方するの!?」



「そうは言ってないだろ!」



………なんだろう、このカップルの痴話喧嘩みたいな光景。



「ほら見て! この女さっきまでは泣いてたのに、今じゃケロッとした顔してるわ!」



「お前には野枝ちゃんの気丈に振る舞おうとする健気なところがわかんないの? 気配りの出来るいい子じゃん。お前みたいな奴と違ってな」



凌太も参戦した。


残された私と浪瀬は、少し離れたところで野次馬たちといっしょに彼女たちの言い争いを見ていた。



「お前止めてこいよ」



「なんで私が」



「原因明らかにお前のぶりっこだろ。『ふたりとも、のえのためにけんかしないでぇー』とか言えば収まるんじゃね?」



「わー、貴様にそんな趣味があったとか引くわー」



「言っとくが、今日のお前そんな感じだからな」



いやー、わかってたよ。


気持ち悪かったってことくらい。



でももし、旅の恥はかき捨てとか言ってそんなセリフを吐こうものなら、憤死する。


まだそこまで冷静さを失ってない。



「でも今そんな事言ったら、余計に収拾がつかなくなると思いませんか?」



「……案外イケるんじゃね?」



「チャレンジャーだなおい」