トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐


「ここ2階だぜ、殺す気かよ」


「たった2階でしょ、骨折はあっても帰ってこれない距離じゃないわ」



鼻で笑って、さあと促す。


浪瀬はこのままだと本当に窓から突き落とされるとでも思ったのか、引きつった顔で両手を挙げた。



「待った待った、俺様はお前に命れ…お願いしに来たんだ」


「命令という言葉が隠しきれてない!」


「お前、俺様に借りがあっただろ、それを返してもらいにわざわざ出向いてやったんだ、ありがたく思え」



あくまでも偉そうな態度を崩そうとしない俺様。



私が浪瀬に作った借り……あれか。





通学電車のインテリイケメンを探しに他校に潜入した。


その時強引に貸してきた制服か。


無理やり押し付けといて、自分はナンパして楽しんだくせに、それを貸しと扱うかこの俺様は。


定期試験のときのアレでチャラじゃないの?



「……まあいいわ。人に物を頼む態度でないところその他もろもろには目をつぶってあげる」



奴がどうであれ、助かったことに変わりは無いからな。

他意はない。



「お前偉そうだな」



「貴様のほうが倍偉そうよ」



「せっかく俺様が来てやったというのに、未だ茶を出さないのか」



「貴様のような奴に出す茶はない!」



テーブルの上の消しゴムをブン投げる。



運よく彼ご自慢の顔に命中。




「ってー、これは高くつくぜ」



投げたものが投げたもの。

大して痛くも無いだろうに、おおげさな。



かっとなってやった。

後悔はしていない。


ついそんなフレーズが頭を過ぎる。



「そのぶん、現物支給で返してもらおう!」



ベッドにもたれてあぐらをかいた浪瀬はニヤリと笑った。


背筋がぞくりとする。



悪い予感しかしない。