迎え入れるように大きく扉を開き、来訪者の姿を認めた瞬間、固まった。


人間、予想をはるかに超えるものと出会うと、叫ぶよりもまず、動けなくなるもの。




誰かが言っていたことを、現在進行形で体験している。


嗚呼、神は我を見捨て給うた。




「一体、どんな空き巣と鉢合わせしたかと思えば、お前か」


外だからか、爽やか好青年の顔をした浪瀬忍が現れた。


「……徹夜明けだから」


名誉のために、犯罪者顔になった理由を言っておく。


てか何で、私の家を知っているの?



「夏休みではしゃいでゲーム三昧してたんだろ」


「貴様と一緒にするな」


「とりあえずおじゃましまーす」



「あ、ちょ、まっ………!」


強引に押し入ってきた浪瀬を追って、玄関の扉を閉めた。





「へー、案外綺麗にしてんだな」



「待てっていってんでしょ!」



脱ぎ散らかされた靴をそろえて、先に上がった浪瀬を追う。



彼は階段を上がり、一番近くの戸を迷うことなく開け、踏み込む。


その後ろ姿を追いかけ、私の部屋であるそこに駆け込んだ。




「まてっつーのが聞こえんのか、貴様の耳はちくわかコラ! っつー………」


寝不足に加え、叫んだ衝撃で痛む頭を抑える。


それをやり過ごし、目を開けると。




「何してんのかなー……」


「んー? 人の部屋にはいったらまず、エロ本さがしじゃねーの?」



「そんなものありません!」



男の部屋じゃあるまいし。


ベッドの下を覗き込む浪瀬を、丸めたノートで力いっぱいたたいた。



「第一、女の子の部屋に勝手に入るなんて、デリカシーってもんがないの?」



「他の女にはンなもん言われたことねえよ」


「貴様の人間関係はおかしい」



非常識だわ、不法侵入だわ。


とっととお帰り願いたいわ。



「お帰りはこちらです」



私は窓を開けて、どうぞという意を込めた手を添える。