もう、だめなんだよ。

終わりなんだよ。


そう言いたかったけど、彼と目が合うと、そんなこと、考えてはいけない気すらした。


不安そうな表情の彼は、私をぎゅっと力強く、だけど優しく抱きしめる。



「金本と離れたら、俺は、きっとだめになるがか」


その声は今にも消え入りそうで。

彼の背に、腕を回しそうになったけど、しなかった。

寸前で、やめた。


代わりに手のひらで、彼の広くて大きな胸板を押す。


あぁ、またそうやって泣きそうな顔をする。