「何か、他に理由があるんじゃないかって……」



 たとえば、俺を陥れたい思いが根底にあって、それを果たすための一環としてやってるとか―――



 そう言った直後。


 バシンッ!! と、ちょっと奥歯がぐらつくぐらいの勢いで平手打ちを食らって、目の前に星が散った。


 揺れる視界の中で、橘の双眸が激しい憎しみと失望に染まるのを見た。




 ―――最低ッッ!




 橘は鞄を引っつかむと、すごい勢いで教室を飛び出していった。



「まっ、待って―――」


 橘っ、と名前を呼ぶより一歩早く、彼と同じく勉強会を抜け出してきたらしい不真面目仲間が、


「よーイノー」


 と呑気な面構えでやってきて、勇敢なる我らが同士よ、とあっという間に囲まれてしまう。



 和也は青ざめたまま、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。