冗談抜きの口ぶりだった。
小学生の頃からというから念が入っている。ずっと俺のことだけを飽かずに想い続けてくれていたという事実に和也は今また強く胸が衝かれ、背筋が伸びる。
「お、俺は……た、橘が彼女になってくれたら、うれしい」
橘はうれしそうに微笑んだ。
彼女が笑うと、和也まで白湯を飲んだみたいにほっこりうれしくなる。そう思えることがなによりしあわせだった。
「笹原のことは、そのままってわけにもいかないけど、でも、それはその、追い追い……」
今はまだ時期じゃない。彼女もわかってくれた。
膝に置いた俺の手にそっと手を重ねてくれた、それがその証だ。
「すべてはなるようになるわ。わたしがついてる」
あたたかい眼差しを受け、ああ、と和也は思った。
多分だけど……こういうときに大人のひとは結婚を決めるのかななんて、そんな生意気な気持ちにもなってみて、切ないくらいの幸福を噛みしめる。
すべてを通い合えたと思った。
……だからこそ、つまらない疑惑に心をひねくらせたままでいるのはいやだった。
「―――ひとつ、確認したいことがあるんだ」
「なに?」
聞き返す橘の声がいつもより高い。
気分良くなっているところに水を差すようなことは、正直不本意ではあったけど、和也は意を決して訊いた。
「橘が俺を彼氏にしたいと思う……それが、すべてか?」
意味が飲み込めない様子で、橘はかろうじて笑みを留めたままかすかに眉をひそめた。
「それ、どういうこと?」

