「わたしにキスされるのが泣いちゃうくらい嫌?」 首をふりふり、唇を引き結ぶ。 嫌とか、そういう話ではなかった。 暫し押し黙り、やがて、情けなさから和也は膝を抱えてその間に顔を埋めた。 ……今、俺は、自分からキスを望んだ―――。 橘を受け入れることに迷いを持たなかった。 (橘が好きなのは、 笹原なのに……) 許されざる裏切りだ―――。