ブラックⅠ-出会い-




それを男がしめた!と言わんばかりにギュッと私を抱き止めた。




だけどそれも長く続くことなく




さっきまでザワザワとしていた廊下がいきなり静かになった事に気が付く。




不自然な静けさ、


さっきまでごちゃごちゃしていた廊下から、波のように人が引いていく。



あぁ、なんとなく分かってしまった気がする。



イツキがあのポーズをした意味に。




「アオイ」



静かな声、
静かでいてどこか落ち着いた声。




その声にきっとこの場にいる皆が集中している、



この場にいる皆が彼を見てる。




「来い」




レイジってすごいと思う。

たったそれだけ、たったその一言だけで全ての人が息を飲むのが分かった。



私の肩を抱いていた男ももう何も言わない。あれだけさんざんマシンガントークしていたのに。


言わないんじゃないかもしれない、正しくは声が出せなくなっているのかもしれない。