あの時はそんな事、ただの名神でしかないと思ってた。 私には関係のない事だと、関わる事のない世界だと...... ヒールの音を轟かせながら、サビれたドアに近付けば、ギィーっと古臭い音を立てて扉を開く。 「おい」 扉を出て五歩ほど歩いたと思う。 ゆっくりゆっくり歩いていたその足を止めるかのような低くて重たい声。 この闇に合った地を這うような黒い声。 私はその声にビクリと一度肩を震わせるとゆっくりと声のする方へと振り返った。