掴まれた腕は熱くてここまで急いで来てくれたのが解る。

「ありがとう」

 喉に張り付いた言葉を懸命に吐き出した。

 本当は今更顔も見たくない。

 見上げた顔に重なった視線、

 睨みつける彼の瞳が怖くて慌てて顔を伏せた。

 腕を振りほどきたいが、無銭飲食で捕まるのも嫌だし、

 一緒に店を出るしか方法がなかった。

 影でこっそり溜息を漏らした。