「あのーここに野沢美佑さんいますか?‥あ!いたいた!美佑さーん!!」
手をぶんぶんと振りながら笑顔で迎えるさっきの男子。
取りあえず周りからの視線が痛かったのでドアの方へ近寄った。
「…なにか用ですか?‥というかどちらさまですか?」
名前を知らない人から何か頼みごととかされても困るので名前も尋ねてみた。
しばらく間があった後
「あ、もしかして俺のこと知らない??」
と自意識過剰な回答が返ってきたのでつい私は
「もちろん知らないですけど?」
と言ってしまった。
たしかにさっき大勢の女子から声をかけられていたから有名な人なのかもしれない。
‥でも私には関係ないことだ。
知ってるか聞かれるとNO
見たことあるか聞かれると多分YES
‥そのくらいの認識しかない。
「まぁ、学校広いし知らなくても珍しくないか♪」
楽しげに笑った顔に少しドキッとした。
‥いや、し‥してないし!!。
私の顔を覗き込みながら手を差し伸べて
「俺の名前は日野藍(ひのあい)!女みたいな名前だけど正真正銘の男です(笑)ちなみに1-Dね♪」
と笑顔でいうものだからつい手を握り返してしまった。
握り返した手をさらに握り返され行き場を失った目線は右往左往‥。
「じゃ、昼休みにまた来るね~」
と言って日野藍は1-Aのドアから去ってしまった。
…一体全体なんだったんだろう…‥?
しばし日野藍の去った方向を見ていると後ろから興味津々なりっちゃんから話を根ほり葉ほり聞かれたのはいうまででもない――。

