私は野沢美佑(のざわみゆう)。高校2年生。


桜が舞う4月に好きだった彼に恋人ができた。‥私の友達とくっついた。


「あ~ぁ‥なんでいつもこう…告白する前に振られちゃうんだろ…」

少し落ち込みながら木に顔をうずくめる。  


遠くの方から「美佑~!」と呼ぶ声が聞こえたので振り返ると親友のりっちゃんが私の方へ手を振りながら走ってくる。

「うわ~ん!‥りっちゃ~ん!」
泣きつくようにりっちゃんこと佐倉律(さくらりつ)に体当たりするように抱きついた。

「うわっ‥鼻水つけないでよ!?」
…などと言いながらも私の頭をよしよしと撫でてくれる。

しばらく泣いていた私の涙が止まると急に
「あ~‥このたびはご愁傷様でした。」

‥あっけらかんな顔で言わないでよ!りっちゃん!!

顔に出ていたのか、心の声が漏れていたのか、
「だってさ、美佑お決まりの失恋パターンだったし、いちいち慰めていたらキリがないのよ…」  

「‥うっ…それは言わない約束でしょ‥りっちゃん…‥」


やれやれといった表情でぐいぐいと手を引っ張って連れて行かれる。
「話はいつもの場所でね。」

‥結局は優しいりっちゃん。

着いたのは毎度お決まり迷子センター!!‥じゃなくて、視聴覚室1の教室。

「いくら視聴覚室2が新しくなったからってさ~ここも掃除しようよ!って感じだよねぇ~」少し埃っぽい視聴覚室1からはたしかに掃除をした形跡はない。

いつもの場所に座るとりっちゃんに促されて今回の失恋の話をした。

私はとにかく好きになったら一直線!ってタイプじゃなくて‥好きな人の恋の応援をしてしまうタイプなのだ…。


話を聞き終わったりっちゃんは呆れながらため息をついた。

「はぁ~‥またアンタって子は鈴木が好きなくせに恋の相談に乗って鈴木の恋を成就させちゃったわけ??…んでまた告る前に振られたということね?」

…はい‥全くもってそうです‥また呆れられちゃった‥。

「告白もせずに鈴木の恋の応援なんかしちゃ振られることになるのは当たり前じゃない!‥まぁ…相手のために応援して振られるなんてアンタらしいっちゃらしいけど。」

うつむきながら思いのほかグサグサ痛いこと言っているなぁ~って感心してみたり。

「つ‥次こそは頑張るもん!!」
ちょっと声が震えちゃった‥はずかしー//  

「あたしだって応援してるんだから頑張りなさいよ~」
私を置いて視聴覚室1から出ていくりっちゃんを見ながら次こそは!‥と心に誓ったのだった。