単純で、一番複雑な感情。
清子は、その感情に浸っていた。
『好き』って、わからない。
その人は、私に向かって、言った。

「僕は、清子さんが好きだよ。」
「どうして?」
「好きだから。好きに理由なんて、いらないよ。」

おかしいんじゃない?と、私が言うと、
じゃあ、なんで理由が必要なの?と、その人は、言った。
私にも、正直よく、分からなかった。
だから、言い返せなかった。

ママと、行った海に。
その人と、行った。
その人は、地平線を眺めながら、

「僕は、清子さんが好きだよ。」

と、言った。
私も、

「好きよ。」