あたしにはまったくわからない感覚だ。

 「なんか気づいたらこれしかな
  いかなって。
  で、中学のときはずっと一人でとこ
  とん弾いてた。」

 「今は?」

翡波が恥ずかしそうに俯いた。

 「…皆と音楽やれてめっちゃ楽しい。
  すげぇ充実してるんだよ。
  …でもさ、もし仮にデビューした
  ら…。」

今までみたいにはならない。

答えはわかっていた。

 「でも、瀬名のこと思うとさ。
  一肌脱いでやってもいいんじゃね
  ぇかなって思えちゃうんだよね。」

 「変なの。
  で?
  翡波はどーすんの?」

翡波が少しダルそうな表情で天を仰いだ。

 「あー、俺?
  …瀬名にあわせるかなぁ。
  亜緒は?」