「あ、庄次ー!」
「春人!」
「部活行こうぜ……ってどうした庄次!」
「最悪だ!」
「へっ?」
 僕に飛び付いてきた庄次は、起こったか、悔しいような顔だった。
「え、ちょ、僕? 僕が最悪??」
「あ?いや、違う違うっ」
「ん? じゃあなんだよ?」
 急に最悪だと叫ばれてもなんのことかわかるわけがない。
「結局罰ゲームにならなかっただろうが、黒河ー」
 僕たちの状況を見かねたのか、近くにいた砂川くんがそう言った。というか罰ゲームって何だろう……?
「俺には充分すぎる罰だっ!!」
「ちょっと、庄次。何があったの?」
「あー、霧谷」
「え、うん?」
 僕の言葉に砂川くんが答えた。
「こいつな、ばばぬきの罰ゲームで新城に告ったんだけどよ……」
「新城さ……ん、に?」
 新城。その名前にドキッとした。
 もしかしたら、もしかしたら。
「ああ。んで、オーケー貰っちゃったわけ」
「え……」
 新城さんが、庄次と。
 そんな、え、え?
「最悪だ……」
「ん、なんか言ったか、霧谷?」
「ううん、何も言ってないよ」
「うわああぁぁ!本当に最悪だ!」
「庄次……」
 ああ、庄次と新城さんって仲悪かったっけ。となりのクラスに居ても聞こえる怒鳴り声は二人のものだったな。
「仕方ないよ、庄次。とりあえず部活行こう!」
 僕はできるだけ元気にそう言った。
「ああ、気をまぎらす」
「それは頑張れとしか言えないよ」
「あ、でも隣であいつも部活してるんじゃ……」
「……仕方ないよ」
 あきれた顔で僕はそう言った。
 そしてもう一度、誰にも聞こえることなく、自分に言い聞かせるように言った。
「仕方ないんだ」