「ごめんなさい」
 教室の端で向かい合っている男女。その女子の方がそう言った。
「ははははー!断られてやんのー!」
「本当に罰ゲームになっちまったな!」
 それを近くで見ていた男子数名が肩を震わせて笑っている。
「え……」
「う、うるさい!」
「ちょっと、どういうこと? ば、罰ゲームとして告白されたの? 私……」
 向かい合っていた男子の方が、顔を赤らめながら男子集団の方へ近づいてくるのとは反対に、その場で呆然としている女子の姿があった。
「そうだぜー? でもお前みたいなブスなら振られてもいいや」
「ひ、ひどい……っ!」
 うっすらと涙を浮かべながら走り去っていく女子。その姿に少しでも罪悪感があったのは、男子集団ではリーダー格の黒河庄次だけだった。
「黒河ー、次何する?」
「ん? まだやるのか」
「次は新城にしてみようと思うんだけど……」
「……新城?」
 男子集団の一人がそう相槌をうった。
「新城ってレベル高すぎねえ!?」
「うん、あいつは美人だが気が強い女だ。そう簡単には落ちないだろう」
「誰かさんはブスにも断られていたけどな」
「うるせえって!」
 そうこうしているうちに昼休みの時間が着々と過ぎている。やるなら早くやらないと間に合わない。
「よし、次のばば抜きでビリだったやつ新城に告白な。どうだ、黒河」
「……いいんじゃね?」
 そう返す庄次がそっけないのも無理はない。
 なぜなら、庄次と新城綾芽はすごく対立していたからだ。
 ことあるごとに反発しあい、意見をぶつけ、結局、双方の友達のおかげでその争いが終わる。それをずっと繰り返している。
 相性は最悪と言える。
「よしゃ、んじゃやるぞー」
 ちなみに庄次の本日のばば抜き戦績は、良い。
 この時までは。