† Lの呪縛 †

ダグラスは眉を寄せた。


敵か味方かも分からない男を目の前に、必死に頭を働かせている。



「お前は一体何者だ」

「勘違いをしないでもらいたい。 あの子に危害を加える事なく面倒を見ていた礼として、こうしてわざわざ断りをいれにきてやったんだ。 名乗る必要などない」



男性はダグラスの横を通り過ぎ、ドアノブに手を掛けた。



「お前はオリヴィアの身体の事を知っているのか?」



ダグラスの言葉に男性は動きを止めた。


更に凍りつく様な視線をドアにぶつけている。



「身体の事、とは?」



お互い胸の内を探ろうとしている。


緊迫した空気が流れ、隙のない空間は重たかった。



「オリヴィアは人とは違う」

「そうだとして、お前たちに何が出来る」

「お前こそ、オリヴィアに何をしてやれると言うんだ。 私たち以上にあの子を幸せにしてやれると言うのか?」



男性の瞳が微かに揺らいだ。



「オリヴィアとはどういう関係なんだ」

「……お前には関係のない事だ」



ダグラスは拳銃から手を離し、ゆっくりと振り返った。



「フォスター子爵夫妻を殺したのはお前か?」



静かだが怒気を含んだ声が、男性の背中へ投げ掛けられた。