† Lの呪縛 †

クレアと共にエリオットを見送ったダグラスは、一人書斎へ向かった。


書斎へはダグラス以外の人間は入ることを許されていない。


妻のクレアでさえ、入る事はおろか、部屋の中を覗いた事すらない。


レッドフォード伯爵家の表の顔と裏の顔、その両方が収まる書斎。


クレアもノエルも使用人も、その事を十分理解している。


知らないのはオリヴィアただ一人。


ダグラスは書斎へ入るとピタリと動きを止めた。


ーバタンッ!!


触れていない筈のドアが勢いよく閉まった。


男性が物陰からスッと現れ、ダグラスはジャケットの中に手を滑らせ、腰に挟んでいる拳銃に手を掛けた。



「無駄な事は止めておけ」



男性は感情の籠らない声でダグラスの動きを制し、射る様な目を向けた。



「目的は何だ」

「オリヴィアを返してもらおうか」

「あの子を手に入れてどうするつもりだ」



男性は面倒臭そうに息を漏らし、壁に寄っかかった。


一挙一動が恐ろしいほど美しく、そして隙がない。


ダグラスは直ぐにでも拳銃を引き抜けるはずなのに、そうする事が出来なかった。



「私はあの子をどうこうするつもりはない。 あの子を眠りから呼び覚ましたのはお前たちだろう? 眠っている方があの子は幸せだった」