† Lの呪縛 †

両親が自分の事で険悪な雰囲気になっている事に、シドは気が付いていた。


だが気にしていない。


両親が何と言おうと、早々に婚約相手を決めるつもりはない。


ずっとただ一人を想い続けている。


そのたった一人だけが、シドにとって愛すべき女性であり人間だ。


シドは自室に入ると、壁に掛けてある絵画の元へと歩き、目の前で足を止めた。


額縁の下を掴み少しだけ持ち上げ、壁に手を当て力を込めた。


掌と同じ位の大きさの長方形が壁にめり込む様に凹むと、カチッという音がした。


再び壁に力を込め、押すと、壁に隠された扉がゆっくりと開かれた。


扉の奥は階段になっており、シドはランプを手に取ると躊躇する事なく階段をおり始めた。


隠し扉は自然と閉まり、ランプの灯りのみが頼りとなる。


階段を一番下まで降りると、木の扉に突き当たり、シドはゆっくりと三回ノックした。


中から返事はないが、シドは構う事なくドアを開け、中に入った。


扉の奥は綺麗に整理整頓され、清潔感のある空間が広かっている。


通気口もしっかりと設けられ、人ひとりならばなに不自由なく生活できるだろう。



「いい子にしていた?」



シドが声を掛けると、ベッドに腰掛けている少女は口は開かずにゆっくり顎を引いた。


シドはランプをテーブルの上に置き、少女の隣に腰掛けた。


静かな部屋なため、ベッドが軋む音がやけに響いて聞こえる。


少女の髪の毛をひと束掴み撫でると、少女は微かに唇を動かし真っ白な肌をほんのりピンク色に染めた。