† Lの呪縛 †

ノエルはオリヴィアの髪の毛をひと束掬い上げると、優しく口付けをした。


洗練された動作は美しくて、オリヴィアは目を離す事ができなかった。


ノエルは髪の毛から手を離すと、オリヴィアの頬を撫で下ろした。



「今日のお茶会、楽しんでおいで。 心配しなくても、キティとも直ぐに仲良くなれるよ」

「キティ?」



聞いた事のない名前が出て、オリヴィアはキョトンとした顔をして首を傾げた。


あどけない表情はノエルの男心を擽った。



「ホプキンス伯爵家の一人娘だよ」

「私と同じ歳の?」

「あぁ、そうだよ。 僕も子供の頃はよく遊んでいた。 心優しくていい子だよ」

「ありがとう、少し気持ちが楽になった」



ノエルとホプキンス伯爵家のキティは幼い頃からの仲で、ノエルはキティの事を妹の様に可愛がっている。


だが、キティに婚約者ができてからは一度も会っていない。


キティに婚約者ができてショックだとか、悲しいだとかいう事ではなく、自分との時間があるのならば、婚約者と時間を共有した方がいいと考えての事だ。


キティが婚約を交わしたと聞いた時、ノエルは心の底から喜んだ。


ただ相手が見つかったから喜んだのではなく、キティが昔から恋心を抱いていた相手と婚約を結んだ事に、深い喜びを感じずにはいられなかった。