† Lの呪縛 †

ノエルの切実な想いに、ダグラスの胸は重たくなった。


少しでもオリヴィアの事を女として見てしまった自分が浅ましい。


例え血の繋がりがないとはいえ、娘として迎え入れた少女を女として見る事などあってはならない事だ。



「オリヴィアと気持ちが通じた時は隠さずに言いなさい。 クレアにどう話をするかは、その時一緒に考えよう」

「お父様はそれでいいの?」

「当人同士が決めた事なら私は文句を言うつもりはないよ。 血の繋がりはないのだから。 ただ、私以外の人間に暴露ないようにしなさい。 そしてオリヴィアに無理強いはするな。 いいな?」



語尾を強調し厳しい口調のダグラスに、ノエルはしっかりと頷いて見せた。


ノエルは今すぐオリヴィアを抱きしめたい衝動に駆られた。


ウズウズして堪らない。


ダグラスはそんな息子の様子に、呆れたような笑みを漏らした。



「見送りはここまででいい。 早くオリヴィアの処へ戻りなさい」

「ありがとうございます。 お父様、行ってらっしゃい」



ノエルの走り去る後ろ姿を見つめながら、ダグラスは本当にこれで良かったのかと自問自答した。


答えが出る気配がないままロング・ギャラリーを抜け、玄関ホールへ足を踏み入れると、執事長のワーグマンが背筋を伸ばして立っていた。


ワーグマンは会釈をするとドアを開けた。



「夕食までには戻る」

「畏まりました」

「あぁ、それからオリヴィアの部屋まで温かいスープを頼む」

「すぐにご用意致します」

「頼んだよ」



ダグラスが馬車に乗り込みドアが閉まると、馬車はゆっくりと動き出した。