† Lの呪縛 †

壁に並べられた見事な肖像画に見つめられる中、二人はゆったりとした足取りでロング・ギャラリーを歩いている。


オリヴィアの前では、まだ見せた事のない厳しい表情を浮かべるダグラス。


ダグラスが何を考えているのか、ノエルは分かっていた。


だが自分からは決してその話には触れない。


触れたくもないと思っている。


だからただ黙って待っている。


ダグラスから切り出してくるのを、待っている。



「クレアの前でも、あの様な態度をとっているわけではあるまいな」

「あの様な……と、言うと?」



ダグラスは惚けるノエルを横目に見ると、鋭い視線を送った。


何食わぬ顔をして歩いているノエルだが、今にも心臓が止まってしまいそうな程の威圧感を感じていた。


当主としての威厳、そして父としての威厳。


まだまだノエルはダグラスの足元にも及ばない。



「今のままでは、私たちの方が先に死んでしまうかもしれない」

「……どうする事もできないの?」

「オリヴィアの体を調べる必要がある」

「調べる?」



怒気を含む声を出し、立ち止まったノエル。


ダグラスも足を止め振り返った。