† Ｌの呪縛 †

ダグラスの心の奥を探るようにオリヴィアはダグラスの指を絡め取り、今日何度目か分からない涙を流した。


家族の温もり。


忘れかけていた温もりを近くに感じるのに、知っている温もりとは少しだけ違う様な気がした。


こんなにも大切にしてもらい、愛してもらっているのに、心に空いた穴は少しも埋まらなかった。


何とも言えない欠乏感はオリヴィアの心をギュッと締め付けた。



「……ありがとう」



胸苦しさを感じながらも、そう言う以外何と言えばいいのか分からなかった。


ダグラスが立ち上がると、オリヴィアは不安そうに瞳を揺るがせた。


ダグラスはニコッと微笑み口を開けた。



「スープか何か持って来させよう」

「……お父様も一緒に食べられる？」



男を惑わせるには十分過ぎる程、甘く可愛らしい声。


まだ男を知らないオリヴィアが男を知ってしまったら……そう考えるだけでゾクッと身が震えた。



「すまない。 私はちょっと用事があってね、そろそろ出掛けなければならないんだよ」

「そう、なんだ……」



オリヴィアの声は明らかに沈み、落胆の色を見せた。


込み上げる愛おしさ。


気付けば手を伸ばし、ダグラスはオリヴィアの頬に触れていた。


ノエルの射るような視線を感じながら。