† Ｌの呪縛 †

「嘲笑っている人たちの顔が、どんどん青ざめていったの。 そしてその顔は何かに怯えるような顔に変わって誰かが呟いた……“化け物”、って……」



オリヴィアはダグラスと視線を合わせたまま、外そうとはしなかった。


真っ直ぐ前を向きながらも過去を振り返っている瞳。


大きな瞳は深い悲しみの色を宿している。



「その言葉を合図にする様に、皆私に背を向け必死に走り去って行った。 最初は訳が分からなかった。 でも気が付いたの……怪我した腕から痛みがなくなってることに……」

「痛みがなくなっていた？」

「そう……腕や洋服は赤い血で汚れてるのに、ざっくり切れたはずの腕の傷が跡形もなくなっていたの」



ダグラスの視線がオリヴィアの左腕へと向けられた。


古傷が疼くかのように、オリヴィアは左腕を掻き毟っている。


傷どころかデキモノすらない滑らかな白い肌。


艶やかな美しい肌が赤く染まっていく。


ダグラスはオリヴィアの手を救い上げ、握りしめた。



「辛い過去を忘れる事はそう簡単には出来ないだろう。 だがこれからは一人ではない。 私たち家族がいるよ」

「……家族…………」

「そう、家族だ。 遠慮せずにたくさん甘えなさい。 我儘を言いなさい。 時には怒ったり喧嘩をする事もあるだろう。 それでも忘れないでもらいたい、私もクレアもノエルも、皆お前を愛しているという事を」