† Lの呪縛 †

穏やかな顔つきで二人を見つめるダグラス。


だが、心中穏やかではなかった。


クレアとの間に生まれたノエル。


今まで手を焼いた事は一度もない。


両親の言いつけを守り、素直で賢く、そして逞しく成長した。


容姿も申し分なく、貴族の間で美男子として有名なノエルに縁談の話も少なくない。


けれどノエルがその手の話に乗り気になった事もなければ、自分から色恋の話をした事もない。



「嫌な事を思い出させてしまうかもしれないが、話せる範囲で教えて欲しい。 何故、化け物などと言われていたんだい?」



ダグラスの声は柔らかく、思い遣りの伺える声ではあったが、オリヴィアの表情は強張った。



「……父親が居なかったから、同じ村の子供たちから虐められてたの。 罵声を浴びせられたり、追いかけ回されたり、石を投げられたり……色んな嫌がらせをされた」



オリヴィアは涙を堪えながら、震える唇を必死に動かしている。


どれだけ虐められようと、シャロンの前では決して涙を流さなかった。


女手一つで育ててくれているシャロンに、心配をかけたくなかったからだ。


泣きたい時や苦しい時……そういう時はいつもキースが傍にいてくれた。


だからなのか、今背中に感じている温もりはノエルのものなのに、キースなのではないかと錯覚を起こしそうになってしまう。