「私はここにいるのに、どうして不安になるの?」

「……分からない。 けど、不安になるんだ。 この不安を取り除いてよ、オリー」



悲しみに顔を歪めるオリヴィア。


不安を取り除いてあげたいという気持ちはあるが、その役目を担う覚悟はなかった。


仮にその役目を受けたとして、不安をなくしてあげる術も知恵も分からない。



「私はオリヴィア……オリヴィア・レッドフォード。 貴方はシド・ルーズヴェルト。 そうでしょう?」

「……あぁ、そうだね」

「今をしっかり見て生きていかなきゃいけないって思うの」

「思い出を……シャロンおばさんを忘れるって事?」

「違う! そうじゃない! けど昔よりももっと大切な人が増えて、少しずつ幸せも感じられるようになって……っ、二人の殻に閉じこもってちゃダメだと思うの。 シドには昔みたいに私のお守りばかりで自由のない生活をしてほしくない。 もっと視野を広げて……」

「止めてくれ!!」



シドの怒鳴り声にオリヴィアは体を強張らせた。


苦しそうな顔をするシドを見て、オリヴィア自身も苦しくなる。



「依存し合うのはもう止めよう……?」



オリヴィアの大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちる。



「オリー!!」



弾かれる様に駆け出したオリヴィアは、ドレスを持ち上げ必死に足を走らせた。