突然の事に呆気にとられるオリヴィア。


だが直ぐに先ほどの怒りを思い出す。



「誤魔化さないで!! 何で怒ってるのか分からないけど、私だって怒ってるんだよ!?」

「…………」



何も答える事なく抱きしめる腕に力を込めるシド。


腕の中でジタバタするオリヴィアだが、腕が緩む気配はない。



「シド!? 本当にどうしちゃったの!?」

「何処にも行くな」

「……え?」

「やっと会えたのに、また遠くに行ってしまいそうな気がしたんだ。 もう君を喪いたくない。 あんな思いをするのは二度と御免だ」



シドの言葉におとなしくなるオリヴィア。


昔の事を思い出すと同時に、アレンの言葉も思い出していた。


二人の環境はがらりと変わり昔のままではいられないと思うオリヴィアと、それでも昔の様に片時も離れずにいたいと思うシド。


気持ちにズレが生じ始めていた。


それは否応なしにもお互い感じ取ってしまう。


オリヴィアはシドの胸を両手で押し返し、見上げた。


その顔からは既に怒りの色は消えていた。