† Lの呪縛 †

シドはオリヴィアの耳元に唇を寄せ、口を開いた。



「辛い時に一緒に居られなくてごめん……それから、守ってあげられなくてごめん……」

「謝らないでよ。 シドは何も悪くないよ。 私も何もできなくて……ごめんなさい」

「オリーは悪くない……辛い事を聞いても?」

「……うん」

「俺と別れた後、何があった?」

「っ…………」



一度口を開いたオリヴィアだが、すぐに口を閉ざしてしまった。


沈黙が流れ、海風の音がやけに大きく聞こえる。


シドはオリヴィアが話し出すのを急かす事なく、ジッと待っている。



「実は……よく覚えていないの」

「覚えていない?」

「捕らえられているお母さんに会えたの。 お母さん、凄くボロボロで……泣きじゃくる私を優しくあやしてくれた。 けど、どうやって村人たちから逃げてお母さんに会いに行ったのかも、お母さんとお別れを交わしてから自分がどうやって眠りについたのかも、記憶が曖昧で思い出せない……目を覚ましたらこの時代だった」



その時の事を思い出そうとすると、オリヴィアの頭の中は靄がかかる様だった。


そして微かに頭に痛みを伴う。