† Lの呪縛 †

「デッキに行かない?」

「行きたい!」



オリヴィアの満面の笑みを見て、シドは漸くホッとした。


この笑顔を引き出せるのは自分だけだと思っている。


デッキ向かっている間昔話に花を咲かせる二人。


主に話しの内容はシャロンだった。


二人の共通の話題。



「わぁ~凄い!」

「走ったら危ないよ」

「大丈夫だよ!」



デッキに出た途端はしゃいで走り出したオリヴィアは、海に一番近いデッキの端へと急いだ。


スカートを持ち上げ、駆けるオリヴィアの髪を海風が撫でる。


デッキの手すりに掴まり、背筋を伸ばし大きく深呼吸をした。


目を閉じ海風を全身で感じ、潮の香を感じた。


シドはオリヴィアに覆いかぶさるように、後ろからデッキの手すりに手をついた。



「寒くない?」

「平気だよ。 シドは寒くない?」

「俺も平気だよ。 それにこうしてると温かい」

「家の中が寒くて震えてたら、いつもこうしてくっついて温めてくれたよね」

「温め合ってると、決まってシャロンおばさんがミルクを温めてくれたよね」



オリヴィアは遠くを見つめ思い出に浸っていた。


今でも感じる寂しさ。


だが胸を締め付けられるほどの辛さは薄れていた。