シャロンはネヴィルに視線を向け、小さく首を下に動かした。


ネヴィルはオリヴィアの頬を両手で包み込み、視線を合わせた。


戸惑うオリヴィアに笑顔を見せ、少しでも安心させる様に努めた。



「心配はいらない。 眠ってしまえば辛い事はなくなる。 この悲しみを考えなくて良いんだ」

「お母さんやキースの事を忘れてしまうの……っ?」

「いいや、忘れる訳ではない。 ただ、眠っている間は夢を見る事はない。 だから、感情に心乱される事はないという事だ」



オリヴィアは確認するかの様にシャロンに視線を向けた。


シャロンは穏やかな顔で頷いた。



「ネヴィルは嘘はつかないわ。 私もネヴィルも貴女の味方よ」

「っ……もしも、本当に私がまた目覚めるなら、どんな形でもいい……っ、またお母さんとキースに会いたい」

「きっと……ううん、絶対会えるわ」



シャロンはこの時初めて嘘をついた。


悪魔に差し出した魂は転生しない事を知っていた。


ネヴィルはオリヴィアと額を合わせ、呪文を唱えた。


呪文を言い終えると同時にオリヴィアは意識を失い、強張っていた表情は解れ、安らかな眠りについた。