† Lの呪縛 †

シャロンにジーッと見つめられ、ネヴィルは怪訝そうに眉を顰めた。



「何だ」

「頭撫でて?」



シャロンの甘えた声。


まだ十代になったばかりの少女とは思えないくらい、魅惑的な声。


ネヴィルが頭を撫でると、シャロンはふにゃっと頬を緩めた。


悪魔であるネヴィルは、人間を惑わす事はあっても、惑わされることはない。


シャロンに対して抱き始めた説明できない感情。


その感情はネヴィルに心地良さを齎した。



「母親が大切か?」

「うん。 だって大好きだもの」

「そうか……」



シャロンの母親の願いを知っているネヴィルは、シャロンの言葉に瞼を伏せた。


契約した以上、主人の命令は絶対だ。



「父親は?」

「……お父様は……怖い」

「怖い?」

「お父様は私の事が嫌いなの。 言葉も交わしてくれないし、目すら合わせてもらえないもの」



そういえば、シャロンの母親から娘の話を聞くことはあっても、夫の話を聞くことはないなとネヴィルは思った。


ー少し探ってみるのも悪くない、か……。ー



「もう寝た方がいい」

「もう少しだけ……」

「明日も来る」

「本当?」

「あぁ、だから今日はもう寝ろ」

「うん、お休みなさい」



シャロンは目を瞑り、暫く経つと可愛い寝息が聞こえてきた。


ネヴィルは音を立てないよう腰を上げ、静かな足取りで部屋を後にした。