† Lの呪縛 †

キティはアレンと腕を組んだまま、頭を寄せた。


切ない顔をしている。


キティの視線の先には、何処かの貴族の娘と踊っているカーティスの姿があった。



「あいつは諦めるんだろうか」

「……諦めないでほしいな。 カーティスがあんなふうに誰かを一途に想うなんて初めての事でしょ?」

「そうだな……だが……」

「うん、アレンの言いたい事も分かってる。 私もそう思うから……。 あのシドお兄様をあんなに笑顔に変えられるのはきっとオリヴィアだけだし、オリヴィアのあんな素敵な笑顔を引き出せるのも、シドお兄様だけな気がするわ」



キティが言った事の殆どの事に、アレンも納得した。


だが、オリヴィアの笑顔を引き出せるのがシドだけだとは思いたくなかった。


自分の腕に絡みつくキティの腕の感覚。


その感覚よりも、オリヴィアを抱きしめた時の感覚の方が愛おしく思ってしまう。


キティの事が好きだから結んだ婚約。


その筈なのに、アレンは今頃になって恋がどういうものかを理解し始めていた。



「私たちも踊りましょうっ」

「あぁ」



笑顔のキティに手を引かれ、アレンは足を一歩踏み出した。


自分の想いを自覚し始めながらも、キティのこの笑顔を悲しみに歪ませる覚悟もアレンにはなかった。