† Lの呪縛 †

「何処へ行くんだ」



ダンスホールを出て行こうとするシドを、エドガーが引き止めた。


シドは足を止めたが振り向かない。



「部屋へ戻ります」

「まだパーティーは終わっていないんだぞ」

「私にはもうここに居る理由がありませんから、失礼します」



颯爽と歩くシドの後ろ姿を見て、エドガーは重たいため息を漏らした。



「お相手も見付けた様だし、いいじゃありませんか」

「それはそうだが、今後の為にも皆とコミュニケーションを取っておく事も大事だろう」

「それは私たちの力でどうとでもなるわよ」

「今はな……。 まぁ、あのシドに好いた相手が出来ただけでも、今日のパーティーを開いた甲斐があった」



エドガーとヴァネッサが夫婦でコソコソと話をしていると、招待した貴族たちから声をかけられ、二人は笑みを繕い対応した。



「いつものシドお兄様に戻っちゃったわね」

「あぁ、そうだな」

「シドお兄様の笑ったお顔、とっても素敵だったのに残念だわ」



キティはがっかりした顔を浮かべた。


アレンはキティの話を聞きながらも、半分上の空だった。


オリヴィアの笑顔を思い出すと、胸にチクリと痛みが走る。


初めて見るオリヴィアの心からの笑顔は魅力的で、アレンの心を震わせた。


見たいと思っていた筈なのに、複雑な心境に陥っていた。