† Lの呪縛 †

シドがオリヴィアのおでこに口付けすると、周りはざわつきを増し、間近でみていたキティは「キャー」っと、興奮した悲鳴を上げた。


オリヴィアは恥ずかしがる素振りもなく、ただ嬉しそうに微笑んでいる。


シドが夜寝る前にオリヴィアのおでこに口付けをする事は、日常茶飯事だった。


それと同じものだと思っているオリヴィアにとって、シドの行動は当たり前の事だった。



「お休みなさい」



言い終えると、今度はオリヴィアが背伸びをしてシドの頬っぺたに口付けをした。


このオリヴィアの行動にも周りの者たちは面喰らったが、当のオリヴィアは何食わぬ顔をしている。


これも昔から当たり前の様にしてきた事だ。


その事を知るのはオリヴィアとシドだけ。


オリヴィアはクレアと手を繋ぎ、家族揃って出口へ向かった。


シドがオリヴィアの後ろ姿を愛おしい顔で見つめていると、オリヴィアがクルッと首を後ろに向けた。


シドを見つけるや否や、笑顔で手を振った。


シドも手を振り返す。


オリヴィアは名残惜しそうな顔をしていたが、ダンスホールを出る時には幸せそうな表情を浮かべていた。


オリヴィアの姿がなくなると同時に、シドもスーッと表情を無くした。