† Lの呪縛 †

オリヴィアを抱きかかえ、ゆっくり歩いていると、アレンの前で息を切らした執事が足を止めた。



「ア、アレン様っ!! お探し致しましたっ、どちらへ……」

「そんな事はどうでもいいだろ。 馬車を回せ」

「は、はいっ!!」



呼吸が整わないまま、執事は来た道を走って引き返した。


アレンは近くのベンチに腰を下ろし、目を閉じたオリヴィアの顔を見下ろした。



「ん……っ……」



オリヴィアの頬を優しく撫でると、小さな口から声が漏れた。


アレンはすこし呆れた笑みを漏らしたが、直ぐに安心した様な笑みへと変わった。


ー本当に人形のようだ。ー


頬を撫で下ろし、唇にそっと触れる。


ふっくらとした唇に引き寄せられる様に、アレンは顔を近付けた。



「キー……ス……」



後少しで唇が触れ合うというところでオリヴィアが呟き、アレンは動きを止めた。


オリヴィアから顔を離すと、アレンは頭を横に振った。


自嘲気味に口元を歪め、空を仰いだ。


ー俺はいったい何をしているんだか……。ー


暫くすると、馬車が目の前に止まり、執事が姿を現した。



「ところで、そちらのお嬢様は……?」

「……レッドフォード伯爵家に向かってくれ」



執事は深く聞く事なく、頭を下げた。