† Lの呪縛 †

暫くすると、オリヴィアの微かに漏れる泣き声が止んだ。


震えていた身体も、普段呼吸をしている時の様に穏やかな動きになった。



「おい」

「…………」



アレンの声に反応しないオリヴィア。


アレンはため息を漏らした。



「……オリヴィア」



初めて口に出してオリヴィアの名を呼んだ。


なんて事ないはずなのに、恥ずかしくて落ち着かない気持ちになる。


抱きしめている腕の力を抜き、オリヴィアの顔を覗き込むと、オリヴィアは目を閉じ目元を濡らしていた。


ー眠ってしまったのか……。ー


オリヴィアを起こしてしまわない様に、アレンは血のついた剣を鞘に収めた。


本当は血のついた剣など持っていたくなかった。


騎士団に所属しているとはいえ、人を傷付けたのは今回が初めての事だった。


大切な人たちを、この国を守る為に始めた剣術。


だが実際に生身の生きた人間に剣を突き刺した時の感触は、気持ちが悪いものだった。


アレンはオリヴィアの膝裏と首裏に腕を通し、立ち上がると同時にオリヴィアを抱きかかえた。


こんな時だが、オリヴィアの身体があまりにも軽くて、アレンは少し心配になった。