† Lの呪縛 †

馬車に揺られる中、オリヴィアは外を見る事なくずっと目を瞑っている。


夜遅くに一人で出掛けるのは初めてなのに、妙に落ち着き払っていた。


外は静かで、馬車の車輪が動く音が一際大きく聞こえる。


暫くすると、馬車はゆっくりと動きを止めた。


ドアが開き、オリヴィアは馬車を降りた。


すると誰かが近付いてくる気配がした。


その人物を見てオリヴィアは驚きに目を見開く。



「こんばんは」

「……どうしてここにいらっしゃるんですか?」

「同じ女性が居た方が、少しはあんしん出来るかと思いましたの。 さぁ、参りましょう」



戸惑うオリヴィアに手を差し伸べるジュリアンナ。


オリヴィアは手をギュッと握り、その手を取ろうとしなかった。


気まずい空気を壊す様に、更にジュリアンナは深く笑った。


手を引っ込め、自分の隣に来る様促す。


オリヴィアはほんの少し躊躇したが、促されるままジュリアンナの隣に並んだ。


人一人分の間隔をあけて。



「ではご案内致しますわ」



ジュリアンナに着いて行きながらも、不安そうに辺りを見渡すオリヴィア。


前回エリオットの診療所を訪れたのはお昼頃だった為、夜である今と街の雰囲気が違うと思うかもしれないが、今いる場所は前回訪れた場所とは明らかに違っていた。