† Lの呪縛 †

「ねぇ、オリー」



ヒューイが穏やかな声で囁いた。


オリヴィアは顔を上げ、ヒューイの顔を見上げた。



「自分を大切にしてほしい」

「……え?」

「君はとても危うく見えるから」

「…………」



オリヴィアは眉を寄せ、首を傾げた。



「君にもしもの事があれば悲しむ人がいる」

「……そうなのかな……よくわかんない」

「少なくともここに一人いるよ」



ヒューイの澄んだ瞳を見ていられず、オリヴィアは顔を背けた。


澄んだ瞳に映る困惑している自分の顔を見ていられなかった。



「ヒューイは変わってるね」

「ははっ、よく言われるよ」



それから裏門に着くまでは会話を交わす事は無かった。


互いに無言だったが、気まずさはなかった。


それどころか、その無言の時間は互いに自然な事であり、違和感など一つも感じられなかった。



「ここでいいかい?」

「うん、ありがとう」



ヒューイがゆっくりオリヴィアを降ろし、オリヴィアは慎重に地に足を着けた。


オリヴィアは片手でヒューイの胸元に触れ、二人は目で会話をする様に見つめあった。


互いの瞳に映る自分の姿に恥ずかしさを感じながらも、目をそらす事が出来なかった。


ヒューイはオリヴィアの頬に片手を添え、顔を近付けると頬に優しく唇を落とした。



「気を付けて……」

「ありがとう……いってきます」



ヒューイは周りを警戒しながら裏門を出て行くオリヴィアの後ろ姿を見つめ、その姿が見えなくなるまでその場を動かなかった。